手頃な価格で流行りの服を楽しめるファストファッションは、アパレル市場で年々存在感を増し、幅広い世代で当たり前のように身近な存在になっています。
利用者にとっては便利な点がある一方で、そこには大きな問題が隠れています。
ファストファッションの光と影
ファストファッションは、「ファストフードのファッション版」を語源としている通り、最新の流行を取り入れつつ低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで大量に生産・販売する業態のことです。
世界規模で事業展開するブランドも多く、常に世界中で流行と共に大量生産・大量消費が繰り返されています。
衣服の大量廃棄
そこで問題となっているのが、大量廃棄の問題です。
安価に手に入るが故に、トレンドが過ぎると簡単に買い替えが起こりやすく、消費と廃棄が短期間で繰り返されるのがファストファッションの特徴とも言えます。
日本では衣服が可燃ごみや不燃ごみとして出されると、再資源化(リサイクル)される割合はわずか5%程で、ほとんどはそのまま焼却・埋め立て処分されているのが現状です。その量は年間で約48万トン。この数値を換算すると、1日に大型トラック約130台分を焼却・埋め立てしていることになり、その量の膨大さが分かります。
ごみを焼却すれば二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出され、石油を原料とする化学繊維が使われた衣類は、埋め立てによる処分では分解されずにそのまま土に埋もれ、土壌汚染の原因となります。
このように、衣服の大量生産・大量消費・大量廃棄が環境へ及ぼす影響は甚大です。
ヨーロッパの取り組み
こうした現状を受け、EUの執行機関である欧州委員会は、サスティナブルな方向へ舵を切り衣料品の持続可能性を高める方針を発表しました。2030年までにリサイクル繊維の使用を義務付け、大量に売れ残った衣料品の破棄を禁止する方向性を定めたのです。
欧州委員会は「衣料品や繊維製品は、耐久性がありリサイクル可能で、危険物質を含まないリサイクル繊維で生産されるべき」と述べ、衣服を使い捨てのように消費する社会へ抵抗していく姿勢を見せています。
出典:
環境省_サステナブルファッション
abcNEWS_EU proposes new rules to discourage disposable fast fashion
「長く大切に着る」ということ
では、簡単に服をごみにしないために、私たちはどんなことができるでしょうか。
買おうとしている服が本当に今必要かどうか見極める、着なくなった服は古着として譲る・買い取ってもらう、資源としてのリユース・リサイクルを目的に自治体等に回収してもらう、などが挙げられますが、「その服をできるだけ長く大切に着る」ということも重要です。
お気に入りの一枚を、できるだけ長く楽しむコツは、素材やデザインに合ったお手入れをすることです。
・色褪せを防ぐために、直射日光や蛍光灯に当てすぎないよう日陰で干す
・素材が柔らかく伸びやすいニットやカットソーはハンガーでなく畳んで保管する
・ナチュラル(生成り)色のものは蛍光増白剤の入っていない洗剤を使う
・デリケートな生地や大切な服はやさしく手洗いする
このような少しの工夫で、服の寿命を伸ばすことが可能です。
オーガニックコットンのお手入れ
洗濯機を使用してオーガニックコットン製品を洗う場合は、「弱水流」「手洗いコース」などの設定をお選びいただき、ネットに入れて洗うことをおすすめいたします。
また、洗剤については、無染色にこだわった生成りの優しい風合いをより永くお楽しみいただくため、天然成分を主とした無添加の洗濯石けんの使用を推奨し、漂白剤・柔軟剤は生地を傷めたり、毛羽立ちの原因となる恐れがあるため使用を控えるようご案内しています。
生地や繊維の性質に合わせた洗濯方法で、それぞれの良い特徴を保ちながら気持ちよく洋服を楽しみましょう。
オーガニックコットンの洗濯方法はこちら
Shoji Works 洋服ブラシ
衣類を長持ちさせるには、ブラシを使ったケアも効果的です。
一日屋外で身につけた衣服には、目に見えない汚れやホコリ・花粉などがたくさん付着しており、毛玉の元となる繊維同士の絡まりも始まります。
このような服を傷める原因は、ブラシによるちょっとしたお手入れで防ぐことができます。
より愛情を込めて、お気に入りの洋服を労わってみてはいかがでしょうか。
私たちにできること
新しく1着を買う代わりに今ある1着を少しでも長く着る。これだけのことを多くの人が実践できれば、全体として大きな廃棄量の削減に繋がります。
大切に長く着ることができれば、より愛着が増し、その服は自分にとって特別なものになるでしょう。同時に、環境保護の一端を担うとてもエシカルな行動でもあるのです。